No.205
子供時代の育ち方のせいで、他人と関わるのが苦手になりました。
何とか、この対人恐怖症を克服したいのですが……
M・Yさん(32歳) 夫 子供3人
2005.11.16

 自分の性格の事で悩んでいます。物心ついた頃から、内気で消極的な性格のため、友だちと楽しく遊んだ記憶はありません。保育園の頃からいじめられていて、小学校でも誰とも一言も話さずに帰る毎日が続いていました。根暗、ゾンビなどと言われ、遠足、社会見学、修学旅行…、どんな行事もひとりぼっち…。とても寂しい毎日でした。
 家庭でも母との関係が良くなく、実父は私が母のお腹にいる頃、病死して、今の父は保育園の頃再婚した人なので、どちらにも甘える事ができませんでした。家計も苦しかったので、母は私の学校が休みの時や帰ってきてから、幼い兄弟の世話を押しつけて父の仕事の手伝いに行ってしまったり、家にいても話を聞くどころか、頭ごなしに叱りつけたり、「洗濯物を干せ」「さっさと茶碗を洗え」など自分がやりたくない家の事をやらせ、母に褒めてもらいたくて進んでお手伝いをしても「ありがとう」の一言も言ってもらえませんでした。今思えば、母も自分の母(祖母)との関係が悪く、友だちのいない人で、私にあたる事しか出来なかったんだと思います。

 そんな人との関わりのない幼少期を送ったせいか、人と話すのがとても苦手で、人前で話をするなんて事があると、心臓がドキドキして、顔も真っ赤になり、しゃべる声も震えてきてしまって、結局自分の意見を伝えられず、普通でいられなくなってしまいます。結婚し子供もできて、これから地域や学校の行事が増えてくると思うのですが、人と関わることが苦痛でしかたがないのです。こんな対人恐怖症を少しでも改善していきたい。せめてあがり症だけでも克服して、普通に自分の思っていることを話せるようになりたいと思っています。アドバイスよろしくお願い致します。
 
あなたは言葉で何かを人に伝える伝達能力に優れていると思うので、
まず人といっぱい話すこと。会話に慣れることです
 拝読しながら、とてもバランスが取れていて、冷静に自分を見つめられる人だなあという印象を強く受けました。

 子供の頃に母親とあまりいい関係を築けなかったこと、幼い頃からいじめられたり友人とたくさん話す機会がなくて寂しかったこと、さらに今では、お母さんがなぜあなたにそのような態度をとってきたのかという背景までもしっかりと客観的に認識している。そして、こういう状況で育ったから、自分には無理なんだと決めつけてもいない。母親のことを責めるだけで終わって、そこから抜けられないというより、むしろ母親のことを思いやり、受け入れていこうとするやさしさも強さもある。何より、そんなあなたの気持ちが、ちゃんと私に伝わってきます。

 ということは、あなたは言葉で何かを相手に伝える伝達能力がとても高いということなんだよ。

 だから、ご主人との出会いを結婚に結びつけ、3人の子供たちともちゃんと気持ちが通じ合えているんだと思う。人と関わることが苦痛とか嫌いだったら、結婚だってむずかしいはずだし、子供たちとだって気持ちを通い合わせることはできないはずだから。人と関わることが苦手なんだと思い込んでしまっているんじゃないかな。

 それは、きっと子供の頃から友達と自分をさらけ出してつきあったり、ケンカしたり、仲直りしたりということが少なかったからかもね。でもそれは、そのような状況に追い込まれてしまったからであって、あなた自身にコミュニケーション能力がなかったからではない。花開こうにも、芽を出す土壌も、育ててくれる栄養もなかったから、発揮できなかったんだと思う。

 今は、きっと自分にはできないという思い込みが強いんだよね。でもその思い込みは、絶対に間違っているよ。だって、あなたはできるはずなんだもの。

 これまでできないと思い込んでいるから、非常に限られた人としか話してこなかったのかな。つい避けちゃったり、黙って聞いていたり。この思い込みは自分ではずすしかない。

 そんなに難しいことじゃないと思うよ。人とうまく距離感を保ったり、緊張しないでしゃべれるようになったりするのは、場数の問題が大きいんだから。経験が習得させるってことね。それと緊張させるのは、とにかく失敗したらいけないというプレッシャー。

 リハビリのつもりで、少しずつ、人に話しかけたり、適当な話題を見繕ってちょっと会話してみるという機会をつくってみたら。 子供がいるっていることは、そういう機会はけっこう転がっているはずだよ。検診の時とか、遊び場とか、幼稚園の送り迎えの時とか。別に深刻に考えることはない。「いい天気だよね」とか「最近、言うこと聞かないんだけど、お宅はどう?」とか、そんなんでいいじゃないの。

 あがらないようにと気張れば気張るほど、あがっちゃうもんなんだって。これも場数を踏んで鍛えるしかないよ。

 実は、私、 子供の頃に身体が弱くて、外で友達と遊んだことなかったから、やっぱり人前で話すことがとっても苦手だった。と言っても、今では誰も信じてくれないけどね。 話すことばかりではなく、人前で何かしようとすると、 あがっちゃって声は震えるし、顔はほてってゆでダコ状態。親に出場させられたピアノのコンクールでは、もう何が何だかわからなくなってしまって、めちゃくちゃになった挙句指が動かなくなって退場。帰りに、ずーっと怒られてますます症状悪化してしまった。

 人前で歌うことなんかさらにひどく、音楽の歌唱テストなんか声が震えて歌にならずに失笑かって死にたくなったもの。

 人前を克服したのは、まず歌だったね。当時、母子家庭音楽祭というのがあって、小学校4年から、父が死んだのでそれに出場することになった。賞品が、生活用品だったりして、それを目当てに出た。最初はダメだったけど、いろいろなところに間をあけずに出場していると、これがだんだん慣れてくる。そのうち、人前なんか、へとも思わなくなってくる。さらに人がいないとつまらなくなってくる。こういう流れで、だんだん平気になってくる。

 そういうもんなんだから、 とにかく最初は人と関わるなんて力をいれずに、ちょこっとでいい。袖触れ合う程度で十分。自分はできないと思っていて、できなければいけないと気負いこむと、うまくいかないと「ああ、やっぱりダメだ」と落ち込んで、ますます望む方向と逆になってしまうからね。

 そろそろとスタートすればいいんだから。対人恐怖症だと思っているなら、うまくいかなくて当たり前。失敗を想定内に入れ込んで、とにかく失敗をいっぱい重ねればいい。ありゃ、今日も空振りだったなあとか、どうもまだドキドキするぞとか、日記にでも書いていっそ楽しみながら続けたらいい。まだ時間たっぷりあるんだから。野球の選手だって、素振りを繰り返しながら、何かコツみたいなものをつかむんだと思うよ。そういうのって、徐々にというより、ある日突然、平気になっている自分を、「あらっ、私、大丈夫じゃないの」と発見する感じで、克服できちゃうってば。

 人と関わるのは、面倒くさかったりわずらわしかったりすることもあるけど、 やっぱり人と関わることでいろいろな発見や面白さもたくさんある。恐怖よりも興味を持って近づけるようになるといいね。きっと、あがらなくなるから大丈夫。

 最初からうまくやろうと力まずに、初めチョロチョロ中パッパ、赤子泣いてもフタとるなというのは、 昔のご飯の炊き方だけど、 こんな感じでそろりとスタートし、 何があっても踏ん張って、数をこなしていけば、後であがり症だった自分が笑い話になると思うよ。