No.206
うつ状態の母の気持ちをまったく理解しようとしない父。
苦しんでいる母がかわいそうなので、何とかしたいのですが……
K・Mさん(22歳)、両親、弟(16)、妹(14)
2005.11.23

 私の父(51)と母(46)の仲について相談させていただきます。
 一年前から母の具合が悪くなり、色々な病院に連れて行きましたが、はっきりした原因がわからず、心が不安定になってしまい、今は心療内科に通っています。その病院で処方された薬を飲んでもなかなか気持ちや体の具合が安定せず、本人も不安を感じているようです。
 ところが、うつ状態な母を父は理解できないみたいで、母に不機嫌な態度をされたり、具合が悪そうな所を見ると、心配するどころかイライラして「またか」とすぐ怒ります。うつという病気を理解してないんだと思い、父に説明しようと思うのですが、そういう話をすると父は黙り込んでしまったり、逆にこちらが怒られそうでちゃんと話し合いを出来ずにいます(実際、「お父さんの思いやりが足りないんじゃない」というような事をいったら、テーブルを叩いて怒りました)。

 父が病気を理解する気持ちもないように感じ、私の言うことに聞く耳を持ってくれなさそうです。そんな父の思いやりのない態度が、母の気持ちが沈む一番の原因のようです。それと、家計が苦しいのに父は状況が分かっていないのか、あまり節約に協力してくれずお金を使ってしまう事も困っています。
 今日も父は母のささいな態度が気に入らなかったみたいで、買い物をしている途中で母だけを置いて車に戻ってきてしまい、その後、母が父に文句を言っても無視するので母は泣いてしまいました。母が泣いてることを父に伝えても自分の部屋にこもって知らんぷりです。
 父はもう母のことを大事には思ってないのでしょうか? 母の淋しそうな姿を見ていると可哀想です。私はなんとか二人が以前のように仲良くなってもらいたいのですが、父にどう働きかければいいのかわかりません。
 
非難するのをやめて、お父さんの気持ちを理解してあげよう。
味方がいるとわかれば、かたくなな態度も変わるかも……
 親が仲良くないと感じると、子供は悲しいよね。ふたりの間に生まれたわけだから、たとえどんな理由があっても、身をふたつに分断されるような痛みを感じるのかもね。特に、一番上の子は深く受け止めるよね。弟、妹は、 お姉ちゃんというもうひとつすがれる存在があるから、風は受けても少しは緩和されているところがあるみたい。

 で、あなたのご両親、以前のように仲良くなってもらいたいというあなたの言葉から察するに、いつごろからか何となく会話がなくなり、しだいに心がすれ違ってきて現在のように冷たい関係になってしまったということなんだろうね。浮気とか暴力とか、決定的な原因があったわけではなさそうだものね。

 子供たちがまだ小さい頃は、子育てに必死で見ないですんでしまったことが、子供が大きくなってそれぞれが自分の世界を持つようになると、 努力して振り払ってきたことに向かい合ってしまう。見ないできたことって、母親である部分を差し引いたひとりの女性としての寂しさや不満なんだろうと思う。端的にいえば、子供が巣立った後で最も大きな人間関係になるはずの夫とどう向き合っていいかわからない、明るい明日を感じられなくなってしまっているということも考えられるね。

 お父さんは51歳。けっこう古いタイプなのか、無口でうまく自分を相手に伝えられないタイプなのか、以心伝心、あうんの呼吸で俺の気持ちはわかっているだろうと思い込んでいるタイプか、 女性は家事育児をして自分に尽くしてくれて当たり前と思い込んでいるタイプか……、 どこかで、自分は一生懸命働いて、家族を食べさせてきたのだという気持ちがある。お母さんは、ずっとそれを感じながら、我慢してきて、ついに我慢の限界に達しつつあって、それが気持ちの不安定さを生んでいるという見方もできる。

 今あなたは、お父さんに、せめて具合の悪いお母さんを理解してほしい、夫としてもっとやさしく接してほしい、思いやりをもってほしいと願って、一生懸命お父さんにその気持ちを伝えようとしているのよね。でも、お父さんは、それを冷静に受け止められずに、怒り出してしまう。

 テーブルを叩いて怒り出すか黙り込むか。こういう反応をするのは、冗談じゃないと心底思っている場合と、 何とかしなくてはと自分も寂しさと焦りと不安を覚えているのに、どうしていいかわからない場合。あなたのお父さんは、どっちかというと後者かもね。

 どうにもならない現状への戸惑いと、 なぜ自分がこんな目にあわなきゃいけないんだという不満。これがあるうちは、妻の気持ちに寄り添うことはむずかしい。でも何とかしなければという思いは、あると思うよ。でもきちんとなぜこうなっているのかということが十分にわからないから、中途半端になってしまう。一緒に買い物に行ったりするのに、 途中でアタマに来て帰ってきてしまう。努力しても、思う通りにいかないからイライラして、努力そのものを放棄してしまう。もう見たくない、聞きたくない、どうにもならないと部屋に引きこもってしまう。お父さんも大変なんだよ。

 で、なぜこうなってしまったかということなんだけどね。長年の関係の影響や、子育てが終わる時期の次の拠り所が見つからない不安定さもあるかもしれないけど、ちょっと気になるのは、お母さんの46歳という年齢。 一年前から精神的に不安定になっているということ。もしかして、更年期障害が始まっているのかもしれないね。 いろいろな病院に行ったというけど、更年期専門外来も訪ねてみた? その視点からも考えてみたらどうかな。

 更年期は人さまざまで、私の知り合いにも40代半ばからとっても不安定になって、すぐ怒ったり泣き出したり、とても外出好きで人付き合いもよかったのに、全然家から出なくなってしまった人がいる。情緒不安定になったり、何もする気がなくなってしまったり、引きこもってしまったり。更年期鬱と言われる症状は、 一般的な鬱とはちょっと違うアプローチで症状の軽減を図ったり、 ホルモン療法でホルモンのバランスを保ったりすることで、 かなり改善が望めるはず。

 あなたは、お父さんにもっと母親を理解するように働きかけ、お父さんが変わることでお母さんが楽になると信じて、いろいろ説明したり話し合いを持とうとしてきたわけだけど、むしろお父さんと一緒にがんばろうねというスタンスにシフトした方がいいんじゃないかと思う。 ほとんどの男性が、更年期の辛さなどわからないから、わがままとしか思えなかったり、 人間が変わったとオロオロしたりするばかり。この態度が、 またまずい方向に作用するという、悪いスパイラルに入ってしまう。それどころか、家にいてもつまらない、 孤独だと酒に走ったり、遊びにはまったりする男性もいる。

 更年期に伴う症状でも、何か他に原因があるにしても、この上お父さんまで引きこもられたら、あなたはお手上げだよ。だからこそ、お母さんが可哀想!とお母さんサイドに立って理解しないお父さんが悪いという図式から一度離れてみようよ。わからんちんの父親改造に取り組むより、お互い大変だけど、どうして不安定になっているのか一緒に考えてみようよと呼びかける方が、お父さんも素直に現実を受け止められるんじゃないかな。

 お父さんとお母さんが以前のように仲良くなる前に、あなたがお父さんの戸惑いや不安に寄り添ってあげることってできないかしら。お父さんとあなたが仲良くなって、一緒にお母さんの気持ちを安定させるために手を結べないかな。 娘のあなたがわかってくれたとお父さんが思えれば、お父さんの孤独感は相当解消される。そのことが度量の深さになって、 お母さんへの思いやりを示せる余裕につながるかも。自分がなぜだ!と一杯一杯の時は、とても人にやさしくなんかできないものね。