No.219
睡眠障害に苦しみながらも仕事と家庭を両立させてきました。
でも、夫の優しさを重荷に感じるように……
F・Iさん(35歳) 夫 子ども2人
2006.3.08
 昨年の秋頃より睡眠障害による不安状態で、心療内科に通っています。今は軽い安定剤を寝る前に飲んだり飲まなかったりという感じで、ひと頃よりは随分ましにはなっています。原因は不明なのですが、この10年間、家事と育児、フルタイム総合職での仕事と、完璧な自分を演じ続けていたことにもあるような気がします。特にこの3年間は夫も単身赴任中で、実家も遠く頼りになる身内もおらず心細い日々の中、自分でも気づかないうちにストレスがたまってしまったのかもしれません。
 睡眠障害になってから情緒不安定な毎日が続きましたが、何とか仕事も続け、随分夫には支えられてきました。単身赴任中ですが、毎週末家に帰ってきて話を聞いてくれ、本当に優しいよい夫です。しかし、先日ふと、そんな夫の優しさがとても辛くなってしまいました。自分の5年以上前の浮気を思い出してしまったからです。
 今まで何度か、全て夫に告白して懺悔したいという気持ちをもったことはあるのですが、そんな告白は夫を傷つけるだけで、自分が楽になりたいための意味しかもたないと分かっていたため、その衝動を抑えて過ごしてきました。しかし、もうこれ以上嘘をついて一生夫と暮らすことが辛くてたまらないと感じ、とうとう夫に過去の浮気を告白してしまいました。
 夫は「過去の浮気で離婚するつもりはない。でも、どうして告白したのかが理解できない。君の不安定な状態を分かっているつもりだが……」と言われました。告白してしまった弱い自分を責める気持ちと、告白してしまった以上もとの夫婦には戻れない、これからどうしたらよいのか、自分のまいた種で苦しんでいます。そして、何より夫を傷つけてしまったことが辛くてたまりません。
 
元に戻ろうと無理なことを望まず、 新しい夫婦として
生まれ変わるんだと発想を転換してみてくれないかな
 夫が単身赴任してしまって、おじいちゃんやおばあちゃんの助けもない状態で2人の子どもを育てながら、総合職の仕事を続けていくと言うのは、並大抵のことじゃないよね。よくがんばっているなあって思うよ。しかも「大変だ」という弱音も吐けないんだよね。その瞬間「じゃ、やめればいいでしょ。ご主人もいるんだし」とか「自分が好きで仕事しているんだからね」という言葉が返ってくる。だから吐き出して楽になることもできないし、仕事でも育児でも絶対に完璧にこなしてやるという決意をエネルギーに変えて頑張るしかない。疲れちゃったんだね。

 睡眠障害も、寝られる時間に完全に寝ておかないと、仕事や育児に支障をきたすという「眠らなきゃ」という意識が強いあまりに陥ってしまったんじゃないかという気がする。

 それでも何とか乗り越えてきたあなたもえらいけど、それを支えてきた夫もえらいね。単身赴任は夫だってしんどいのに、週末に帰って来て話を聞いてくれる夫なんて、今時の日本ではそんなにいないからね。 「文句あるならやめろよ」 「誰も働いてくれなんて頼んじゃいないだろ」なんて、話を聞くどころかうざったそうにする夫のほうが圧倒的に多い。

 あなたももちろんそう思っていた。夫のやさしさを「ありがとうね」と軽やかに受け止め、「私ってラッキーだわ」とニコニコしていれば、彼のやさしさはあなたを支えてくれたのだけれど、あなたは深く重く受け止めちゃったんだね。きっと、あまりに疲れていたから、週末の夫が地獄に仏みたいな存在だったのかな。 仏の前で、 ウソをついているのはいけない。こんな夫をかつて裏切ってしまった自分が許せないと懺悔する気になっちゃった。でも、夫は仏ではなく、生身の男だからね。でも、よくできた男だよね。やっぱり、あなたはラッキーなんだよ。

 ラッキーなんだから、ラッキーの素に安心して乗っていればいいんだって。どうも、あなたは、目の前のラッキーを見ないで、自分でせっせとアンラッキーの素を作り出しては悩んでしまうという回路にはまりこんでしまっているみたい。とにかく、その回路から抜け出すことが大事。

 告白することは夫を傷つけるだけだと、あなたはわかっていた。自分が楽になりたいという意味しかないこともちゃんと理解していた。でも、衝動を抑えきれないでつい口にしてしまった。その結果、浮気を隠しているという辛さから解放されたはずのあなたは、今度は夫を傷つけてしまった辛さを抱え込んで、元の夫婦にもう戻れないと悩んでいる。

 何か変だと思わない? それでも過去のことで離婚をする気はないと苦しみを乗り越えようとしている夫は、これじゃ踏んだり蹴ったりでしょ。

 あなたが戻りたいけど戻れない元の夫婦ってのは、あなたが浮気をする前の夫婦ってことかな。でも、その土壌からあなたの浮気が生まれたわけだからね。元の夫婦に戻れてもまた同じような展開になっちゃうとも考えられる。

 浮気をなかったことにすることも、 告白してしまったことをなかったことにすることも、不可能なんだよ。不可能なことを求め始めたら「なんであんなことをしてしまったのか」とずーっと後悔して自分のことを責め続けるしかないでしょ。まさに後悔先に立たずってこと。だから、いくら悩んでも、しようがないんだよ。

 過去の失敗をなかったことにできないんだから、元に戻りたいという考えでは先に一歩も進めないよ。やっちゃったものはしようがないじゃん。言っちゃったものを、今さら言わなきゃよかったと悩んでもしようがないじゃん。

 取り返しがつかないというのは、いつまでも後悔してさらなる悩みを生んでしまう気持ちを吹っ切れない状態を言うんだと思う。 失敗から自分の弱さを知り、そのことで傷つけた人を二度と苦しめないと決意し、何が自分を不安定にしているのか原因をきちんと見つめていければ、十分に取り返せる。取り返しがつかないのは、取り返そうとしないから。取り返せないのではなく、自分で取り返さないと考えられないかな。

 夫を傷つけたというなら、どうやって二度と傷つけないですむか、どうやって傷を癒せるかと考えるのが、傷つけた人のとる態度だと思うでしょ。今のあなたは、受け止めることで、あなたや子どもや家庭を立て直そうとしている夫の傷口に塩を塗っているようなもの。塩じゃなくて薬を塗ってあげなよ。

 申し訳ないと自分を責めて、ひとりで落ち込んで、悲しい顔をしている場合じゃないのよね、本当は。浮気と告白とふたつも後悔の種を抱えているけど、それを肥やしに「それでも結婚してよかった」と思える方向に持っていく努力をしなきゃ。夫のためにも、子どものためにも、何よりあなたのためにも! 

 週末に夫が帰ってきたら、笑顔で迎えて上げないと。ありがとねって素直に言いなよ。仕事と育児も適当に手を抜いて、もっと楽しみなって。子どもと外で思い切り遊ぶとか、走るとか、張り詰めた神経の疲れを、肉体の疲れにうまく変換すれば、気分も変わるから。週末、家族でスポーツでもして汗を流せば、笑いあえるんじゃないかな。このことで、あなたが不安定な状態から脱却できれば、それが夫への何よりのプレゼントだと思ったらいい。

 元の夫婦に戻ろうという無理なことを望まず、 これまでのことをすべてしっかり織り込んで新しい夫婦として生まれ変わるんだというように発想を転換してみてくれないかな。そのことを夫にも話して、素直に見守っていてねと頼んだらいいのに。つらいつらいと思っていたら、今そこにある再生のチャンスが見えなくなるよ。