No.220
夫のバッグからシャネルバッグの領収書を見つけて…。
でも嫌いになれません。以前のような仲に戻りたい
M・Kさん(46歳) 夫 子どもひとり
2006.3.15
 結婚17年目。夫は一歳年上。小学校5年生の男の子がいます。お互い30歳になるときに恋愛結婚。結婚した後二人で留学、学位をとるなど、お互いにキャリアアップ志向の仲の良い夫婦でした。でも、主人に好きな人が出来、うちに寄り付かなくなりました。デリヘルもしているようです。私は主人と寄りを戻し、仲の良い夫婦に戻りたく、どうしたらよいかの相談です。
 主人は外資系企業の役員で、お金も、地位もあります。私も留学後は外資系企業に勤め、昨年までは部長をしていましたが、今は退社し、専業主婦です。私も周りもずっと仲の良い夫婦という認識でいました。ただ、夫婦生活は結婚当時から月一と少なく、それがいつの間にか年に何回かという感じになりました。でも、結婚当初からそうだったので、「頭を使う人はそういうものなのね。個人差もあるし」と思っていました。それがここ3年間ぐらいはセックスレス。誘っても、「そういう気になれない」と断られました。淋しかったですが、会話もあり、私はまだ仲良しと思っていました。
 ところが、昨年末にシャネルのバッグの領収書を、たまたま主人のバッグから見つけてしまったのが事の発端です。40万円近くもするバッグでした。私は結婚以来主人からプレゼントなど一度ももらったことがありません。でも、うちは財布が一つになっているので、プレゼントなんかもらえなくても心がつながっているからと、寂しさなど感じたことがありませんでした。領収書につづいて、映画のプレミアムチケット2枚も出てきました。主人は映画には全く興味がなく、結婚前に一度行ったきり。結婚後は一度も一緒に行ったことがありません。それなのに……、ショックでした。しかも映画の日付は土曜日。当時、土曜日は子どもがキャッチボールしたくても、疲れたからと直ぐに切り上げ、休日出勤で会社に行っていたのに……。家族、子供と過ごさず女と映画を見に行っていた、という事実に打ちのめされました。
 シャネルのバッグの領収書をみつけたことを話し、年末に話し合いました。最初はしらばっくれていましたが、私が「女に金づるにされているんじゃないの? その女性と別れないなら私があなたと別れる」と息巻くと、ようやく重い口を開いて、「僕はあなたに、こうすべきだ、こうすべきでないといつも攻め立てられてきた。ここ10年間ずっと心がやすりで削られるようだった。価値観も違う。何を言っても僕が変わらず、暖簾に腕押しでイヤだったと思う。でも、自分は、ああしろこうしろと言われるのがいやなんだ。あなたと違って僕は思ったことを言えない。溜め込むタイプなんだ。だから、心を閉ざすことにした。もう限界だ」と言いました。
「彼女と別れてくれ」と言ったことに対しては、「今のままでいいんじゃないの。結婚については何の幻想も抱いてない」とのこと。つまり、私と離婚することは考えていないが、彼女と別れることもしないということでしょう。
 確かに私は口うるさかったと思います。家の中に安らぎを与えていなかった。でも、私は私なりに一生懸命でした。転職し、新しい業種の会社で部長になり、一生懸命働きました。だからイライラもしていました。でも、主人は仕事以外何もやらないタイプなので、私が常に保育園の送り迎え、ベビーシッターの手配などをして、もともと子供を望んでいなかった主人に、育児の負担を求めることは決してせず、ひとりでずっとがんばり通してきました。
 また、子供の受験に対しての考え方の違いも二人の距離を広げて行ったんだと思います。子供の受験勉強が本格化した頃、成績が悪くやる気の無い息子に対し、厳しい態度で、叱咤激励をしていました。かなりの教育ママだったと思います。そのため、子供との関係がギクシャクして、息子と殴り合い(それほど激しいものではないですが)に近い形に発展することもしばしば。それを見て見ぬふりする主人に対し、「どうして、何も息子に言ってくれないの? 子供が母親に手をあげていたら、子供を叱ってくれてもいいじゃないの?」というようなやりとりも多々ありました。
 浮気発覚後、主人の態度は目に見えて硬化しています。毎晩、帰宅は午前様だし、連絡の無い外泊も2回。私が携帯を鳴らしても、通じません。さらに、朝は起きるとすぐシャワーをあびて、タクシーで会社へ。昨晩の私たちの会話も、「おかえり」、「ただいま」、「おはよう」、「車来たよ」に対して、「うん」だけでした。
 実は浮気がばれたのは初めてではなく、今回が3度目。今までの相手が素人なのか玄人なのかもわかりません。それまでは、歩く時は手をつなぎ、朝も、行ってらっしゃいのキスをしていましたが、浮気発覚後は、さすがに私もそういう気持ちがなくなりました。ただ、前の2回の浮気の時は、何となくうやむやなまま、外面上はそれなりに元に戻っていました。しかし、今回は……。土日も朝帰りしたりで、もう浮気というか彼女がいる事が当たり前みたいになっています。
 私の問いかけにはすべて無言で通し、バレンタインや主人の誕生日に食事に誘っても、「無理」の一言。もちろん、セックスの誘いには、強い拒絶を受けてしまいました。一連のことが本当に悲しく、かつ腹立たしいのですが、氷のように冷たく心を閉ざしている彼に対して、なぜか嫌気がささないんです。優秀で仕事が出来る彼を尊敬しています。彼を憎めないんです。彼の外形も私は好きなんです。
 連絡なく初めて外泊された時はつらく、「あなたの人生だから好きなようにしていいよ。でも外泊する時は、メッセージでもいいから電話を下さい。帰りたくない家にしてごめんね」と、朝、会社の電話に留守電を入れました。こうなったのが、私一人のせいだとは思いません。私はただ自分の理想とする”家庭”を作りたかっただけなのですが……。
 友人は追わないほうがよい。彼が戻ってくるのを待ってはどうかといいます。だから、今、とりあえず自分を変えるべく努力をしています。穏やかに人に安らぎを与えられるように。また、少しでも体型がよくなるようトレーニングをしたり。自立しなければと思い、仕事も探しています。
 でも、彼の気持ちは戻って来るのでしょうか? 離婚を避けるにはどうしたらいいでしょうか? 電話もせず、何も言わず、攻めもせず、愚痴もいわず、帰ってきた時は機嫌よく出迎えるのでしょうか? 悲しみ、苛立ち、怒り、寂しさを見せずに、ただ待つのでしょうか? 「自分を愛しているだけなのでは」と言われそうな気がしますが、私は彼と別れたくないのです。
 
長期戦を覚悟して焦らないことが肝心。相手を変えようとせず、
まず夫と息子をありのまま認めて受け入れることです
 とっても煮詰まってしまってるね。これでも精一杯急いだつもりなんだけど、メールの後、どうなっちゃっただろうかと心配になってしまうくらいです。

 あなたの気持ちの中に、 夫に対する怒り、悔しさ、後悔、 先の見えない不安、何とか関係改善に努めて一刻も早く元の状態に戻らなきゃという焦りが渦巻いてしまっていて、もう自分が本当はどうしたいのか見えなくなってしまっているのかなあ。とにかく、今の状態が耐えられない。だから何とかしたい。何とかしなきゃ。 そのために何をしたらいいのか。 いろいろしてみるんだけれど、その度に求める方向ではない反応に出くわしてしまって、ますます混乱してしまう。

 何か、ひとりでキリキリ舞いしているように見えるよ。

 きっと、短くて浅い呼吸で毎日過ごしているんだろうなあ。苦しいよね。

 このメールを読む前に、まず、目を閉じて、 肺の中に吐き出されないまま溜まって、 澱のようになっている息をみんな叩き出すように息を吐いてみて。 これ以上、吐けないというくらいまで吐いたら、口を閉じて鼻から今度はこれ以上吸えないというくらいまでたっぷり新しい空気を吸う。何も考えず、ただ呼吸することだけに意識を集中して15分くらいやってみてくれないかな。気分が落ち着くよ。 これはピンチの度に、 冷静さを取り戻すために私がお世話になっている方法です。

 さて、ドロドロで動きの自由がなくなった気持ちが、サラサラとは行かなくても少しは流動性が出てきたかな。

 今、あなたはふたつの爆弾を抱えてしまっているように私には感じられる。ひとつは夫。これはもう半分暴発しちゃっている。

 もうひとつは息子。小学校高学年から中学校にかけて、男の子の気持ちがもっとも不安定になる時期なんだよね。これまでは母親のいうとおりに従っていた子が、批判的な目で母親を見るようになって反抗するようになってくる。 実際にあなたに殴りかかったりしているんだよね。それは、無邪気な取っ組み合いなんかじゃない。自我が育ち、自分の好きなことができ、これまでのようにあなたの理想とする道を素直に歩いてくれなくなる。 教育に熱心なお母さんは、 つい子どもの幸せまで自分で決めてあげちゃう。 それに対する反発で、息子も相当に煮詰まっていると思う。

 そんな時に、親がイライラしていると、自分で自分の道を閉ざすような自虐的な方法に走るからね。どうやって母親のベールから自分を取り戻そうとあがいているだけでも大変なところに、さらに両親がイライラして暗い顔ばっかりしているというのは、脅かすようだけど危ないよ。子どもはとっても敏感だから、おそらく両親の状況は察知していて、誰にも言えない不安を抱えていると思う。

 妻として大変につらい立場にいることはわかるけど、母としても、今、まさに正念場に立っていることを忘れないで。 ひとつひとつでも容易じゃないのに、心配事や修羅場はなぜか連れ立ってやってくる。ここをどうクリアできるか、 あなたの人生最大の試練。しっかり立ち向かわないと。

 あなたはとっても頑張りやで、理想が高く、常に理想に向かって自分を磨き、向上していくタイプなんだね。 仕事でも家庭でも、 理想に向かって邁進していく。えてしてこのタイプは、周囲の人にも同じことを求めちゃう。意識的ではないかもしれないけれど、常に向上しつづける努力をしないと認めないとか、 気を抜いたりダラッとしたり弱音を吐いたりできないような雰囲気で、これまで夫も息子も引っ張ってきたのかもね。理想の家庭を築きたかったというあなたの言葉、よくわかる。そのために、仕事も家事も育児もひとりでがんばってきたんだものね。

 お互い、それぞれの職場でそれぞれの能力を発揮するのは個々の問題だけれど、家庭や子どもはそれぞれの考えを尊重しあわないと、どっちかが折れるとか我慢するという形になってしまう。毎日のことだからね。最初は気づかないほどの傷が、徐々に広がって、まるである瞬間にバスタブからお湯がこぼれるように、勢いよくあふれ出してしまう。

 アレルギー反応にも似ているね。あなたは今、夫のアレルゲンになってしまっている。だから、あなたが反省しても、変わったように見せても、理解を示そうとしても、一切受け付けることができない。無理してニュートラルに戻そうとすればするほど、激しい抵抗を示すんじゃないかな。まだあふれ出してはいないけど、これはおそらく息子さんも同じだと思うよ。

 あなたは、別れたくない、夫婦としてやっていきたい、そのためにも憩える場になるように努力しようと、すでに結論を出している。でもね、これもまたあなたが考える“憩える場所”なんだよね。夫や息子が憩える場所って、どんな場所なのか考えたことある? 相手に聞いてみたことある? これまでも懸命にひとり相撲を取ってきたのよね。

 離婚しない! もう一度、心身ともの愛情のあふれた家庭を取り戻すのだ!と、結論を出さずに、まず、今の状態を丸ごと受け入れてみることが第一歩なんじゃないかと思う。

 夫の行動をチェックしても、自分の気持ちがざわつくだけ。一生懸命、戻ってくる言葉を勘定しながら会話をしても、今の状態じゃ悲しくなるだけでしょ。

 相手に何かを求めないで、 あなたがまず変わらなきゃ。夫の気持ちを戻すために、いろいろなことを我慢したり、やさしくしようと努力しても、それはこれまでのあなたの延長線上だものね。

 とんでもなく認めにくいことだけれど、夫の今を認めてあげる。息子も全面的に認めてあげる。これまでは理想の家庭を求め、今は愛情ある夫婦関係を復活させるために頑張るというのは、言い換えれば、また相手に自分を認めさせて、自分の願いどおりにするってことなんだよ。だから逃げる。同じことの繰り返しだと感じているからね。

「ま、しょうがねえか」って、ドンとみんな認めちゃう。後悔しても、時間は元に戻せないからね。ジタバタしたってどうしようもない。プールの中でね、これ以上沈んだら大変だから早く浮かび上がらなきゃともがいていると、どんどん沈んじゃう。すべての息を吐ききって一度底まで沈んじゃうと、あとは指一本プールの底に付くだけですーっと浮き上がれる。プールに行って実験してごらん。コツがわかるから。今の状況ってこんな感じなんだよ。

 夫のことを切り離して、あなた自身がどうやったら肩の力を抜いて楽になれるか、何を一番大事にしたいのか、じっくり考えてみてよ。自分をまず浮かび上げることが先決。

 仕事ができて収入も高くカッコいい夫ではなく、仕事で失敗し、収入もなくなって、年老いてしまった夫を、あなたは今のように愛せるの? 理想の夫って、 どんな夫なの? 何もかも失ったとしても、ここだけは輝きを失わないだろうという夫の良さは何? 夫は本当はあなたにどうあってもらいたかったんだろう? 夫が溜め込んできた悲しみって何なんだろう。閉ざしてきた気持ちって何なんだろう。

 そんなことを、ポツポツとゆっくり考えてみたら。ストレートパンチをくらったダウンはすぐに立ち上がることが可能だけれど、ボディーブローがきいてリングに倒れるとなかなか立ち上がれないものだから、焦ってもいいことはない。長期戦を覚悟しなきゃ。

 この状態を何とかしようと頑張るより、あなた自身がひとりの女性として、これからどう生きていきたいのか足を地につけて考え、その上でもういちど夫のありのままの姿を認められるかどうか。仕事をするのもいいし、ボランティア活動をしてみるのもいい、これまでできなかったことをするのもいい。より強く、より大きく、より優れて……という右肩上がりに価値感を求め続けると疲れるからね。あんまりがんばらないで、肩肘はらずに、「なるようにしかならないわ」とドンと構えたらどうかな。この時期は、あなた自身にとっても大きな転機になるはずで、決して無駄な時間じゃないから。何より、息子のためにも、あたふたしないで腹を据えて欲しい。

 以前、仕事も家事も育児も、誰にも迷惑かけずにきっちりやろうとしてイライラしていた私に反抗の限りを尽くした息子が、こう言ってました。「お母さんには、ただ笑っていて欲しかった」。目からウロコが落ちるような気分でした。

 作り笑いではなく、夫に笑顔を戻してもらうのではなく、あなた自身がこの状況を受け入れた上で、 なお自分の力で笑顔を取り戻した時、これまでと違う関係が生まれる可能性がでてくるんだと思う。