No.225
夫に愛人がいたことが発覚。家族に迷惑をかけていないのだから、
今まで通りでいいだろうと、開き直られました
T・Iさん(40歳) 夫 子ども1人
2006.4.19
 結婚して18年、ずっといい夫だと思っていたのに、彼にはもう長い間つきあっている女性がいました。夫は義父から引き継いだ会社を経営していて、結婚当初からずっと仕事の関係で、月に2、3回東京へ出張する習慣があるのですが、その東京に、昔ならおめかけさんとでもいうような人がいたんです。2月、私の学生時代の友だちが東京へ行ったとき、夫が定宿にしているホテルで、夫とキレイな女性が一緒にいるのを見て、「まるで夫婦みたいだった」と連絡してきたのです。
 まさか夫に限ってと、最初は信じられなくて、ついそのことを夫に話したら、彼女がいると告白されてしまいました。私は、天国から地獄へ突き落とされた思いでしたが、夫はその女性がいても私と子供になんら迷惑をかけているわけではないし、知らないにこしたことはないからこれまで言わなかったと、言い訳しました。お前たちには十分なことをしてきたつもりだし、これからもそれは変えるつもりはないから、悪いことをしているとは思わないと言われました。
 確かに、夫は私のことも娘のことも、とても大事にしてきてくれたと思うし、その女性との関係は東京に出張しているときだけなので、私たちの生活に影響があったということはほとんどありませんでした。だから、これまで知らずにこられたんだと思います。でも、やっぱり知ってしまうと、私の気持ちはこれまでと同じにはなれません。
 その女性は30歳で元モデル。5年前に仕事の関係で知り合ってから東京に行ったときは必ず会っているとか、月々30万円の援助をしているとか言われて、「ああそうですか。わかりました」って、納得できませんよね。それに私たちが言い争いをしているのを娘が聞いていたようで、お父さんと口を聞かなくなりました。それも心配です。
 吉永さん、私はどうしたらいいのでしょうか? 夫は、私がこれまで通り知らなかったことにして、元通りになれば娘も落ち着くし、何の問題もないと言います。いい夫と言いましたが、私が浮気をやめてといって聞いてくれるような人でないのは、すごくよくわかっています。だから、私が今まで通りに戻れるか戻れないかが問題なんです。
 私さえ元通りになればいいのよ、と自分に言い聞かせてみましたが、やっぱりダメです。もうどこかへ行ってしまいたい。娘を連れて離婚したほうがいいのかもしれないと思い始めました。でも、わかりません。いまでも夫は私のことを愛しているといいます。彼女のことも好きなんだそうですが……。
 
不幸を乗り切るには不幸から逃げない、目をそらさない。
現実と冷静に向き合えば、どうすべきかが自然に見えてくるはず
 作家の太宰治は「お前をチラと見たのが不幸の始め」と言っているけど、本当にそうだよね。不幸は実は、あなたの夫と彼女が知り合った5年前に生まれていたんだけど、たまたまあなたの友人が目撃して、あなたが知ってしまった時にあなたの不幸が始まった。 もし5分の時間のズレがあって、お友達が目撃しなければ、 あなたは今も申し分ないいい夫だと思っていられて、こんなつらい思いをしないですんでいた。あなたの不幸は始まっていなかったってことになるよね。

 こう考えていくと、何か不思議だね。でも、知ってしまった以上、もはや知らなかったことにはできない。 知ってしまったことから、 逃れることはできないってことでもあるわけだから、気合入れて立ち向かうしかないね。ことは、あなたと夫の問題だけではなく、思春期のそうでなくてもむずかしい年頃のお嬢さんをすでに巻き込んでしまっている。

 ということは、 あなたは妻としての立場だけでなく、お嬢さんを守る母親の立場でもあるということを忘れないで欲しい。もうどこかへ行ってしまいたい……という目の前の不幸から逃げ出したいという気持ちは、信じきっていた夫に裏切られた妻としてはしようがないと思うけど、母親としてはちょっと弱すぎ。娘を連れて離婚したほうがいいのかもと闇雲に突っ走るのも、妻としての感情に娘の将来を巻き込むことで、母親としてはちょっと自分勝手過ぎだよ。

 この度のことであなたが傷ついたのは、 夫の裏切りであることは間違いないんだけど、もっと深いところであなたの気持ちを落ち込ませているのは、夫の価値感というか、夫婦観なんじゃないかしら。浮気がバレた時、つまりイザという時に、 人間はその本性があらわれてしまう。ひたすら謝る人。何とか言い訳しようとする人。そんな事実はないと断固認めない人。一回だけだ!と回数問題にすりかえてバレた運の悪さを強調する人。 このあたりは、とりあえず「ヤバイ!」と青くなっちゃうタイプ。つまり、浮気はやっぱりいけないことだと思っていて、何とか妻との間を修復しようという意識が存在する人なんだろうね。それでも妻にしてみれば、カウンターパンチをくらったようなもので、痛みは残るが、その後の展開次第ではやりなおせる。

 困るのは、開き直るタイプ。あなたの夫もどうやらこの困ったタイプだね。

 開き直るタイプにも二種類あって、バレたことをいいことに、妻と別れて愛人のほうに全面的に行ってしまう人と、「何が悪い」と妻も愛人もこれまで通りという人。

 あなたの夫は、 まさにこの 「俺はちゃんと面倒みてやってるだろう。何が文句あるんだ!」というタイプみたいだね。

 これまであなたはずっといい夫だと思っていたというけど、あなたにとってのいい夫像って何だったのかな。真面目で仕事を一生懸命して、収入も潤沢で生活の苦労をしなくてすみ、家族を大事にしてくれるってことだったんじゃない? 夫も十数年の間、あなたの期待に応えていたんだと思う。それが「お前たちに十分なことをしてきたし、迷惑をかけているわけじゃない」という言葉になっている。

 信じられないほど、自分の浮気があなたを傷つけているという思いがない。だから何なんだよというこの開き直りは、夫があなたとこれまでどんな関係を築いてきた上で発せられているんだろうって考えちゃう。それは、とりもなおさず、あなたがこれまで夫に何を求め、どんな関係を築きあげてきたのかということでもあるのよね。

 彼は、もともとそういう女性観を持っていた人なの? つまり、妻子を大事にするということは、経済的に困らないように、不自由のない暮らしを保証してあげること。だから浮気なんか大したことじゃないから、知らなかったことにしろと言う。そんなことは無理だよね。それでも、もし本気でそう思っているとしたら、 よほど自分勝手で人間的に人の心を察することができない人ってことになる。もし、あなたがそんな人じゃなかったと否定するなら、どうしてこんなことを言うようになってしまったのかということになる。

 どっちなんだろうね。もし元来、妻子には生活の面倒を見れば十分という考えを持っているなら、現在30万円のお手当てで東京妻にしている女性にも愛人として割り切って付き合っているということになる。30歳の彼女が結婚を求めたりしたら別れる道を選ぶだろうね。

 最も重いのは、あなたはこれから今回のことで知ってしまった夫の姿と今後どう向き合っていくのかという問題。これも知らなければ、幻想を抱いていいイメージを作り上げることができるけど、知ってしまったから始まる事柄のひとつだと思うよ。

 これまでと同じ生活を保証するという言葉にあなたも割り切って、 娘の心の安定をあなたが盾になって守る覚悟ができるか。どうしても割り切れずに、不安定なまま暮らすことになるなら、すでに事情を知ってしまっている娘に正直に自分の気持ちを打ち明けて、 娘の選択に関しては娘の思いを尊重する覚悟をするか。どんな場合でも、子供は両親には別れて欲しくないと思うものだけれど、あなたのために我慢しているという苦しげな親を見ているのはもっとイヤなのだからね。

 ただね。今でも夫はあなたのことを愛しているといっているんでしょ。ここにちょっと引っかかる。上っ面で言っているのか、本気なのか、文面では判断できないんだけど、もしそうなら……、なにかこれまでの生活で寂しいとこがあったのかな。生活を支えることしか求められていないという寂しさが、求められていることはちゃんとしているだろう文句あるかという態度の投影されているということはないかな? 本当はもっと違う面、暮らしを支える存在として頼られるだけではなく、何かあなたとの関係で本当は求めていることが満たされていない不燃焼感を他の女性に求めたということはないのだろうか。

 今は、夫が開き直り、あなたは天国から地獄と思っているけど、あなたにとって天国だったこれまでの暮らしが、夫にとってはどう映っていたんだろうね。

 チラと知ってしまった不幸の乗り切り方は、 不幸から目をそらさず、いっそしっかり目を開いて、後ろ向きで逃げようとしないで、 見えてしまったことに冷静に向き合うしかないんだよね。苦しいだろうけど、なぜ?という視点を自分と相手と両方の側に持って、意地でも冷静に考えられないかな。元通りになれるかなれないか、 離婚するべきか留まるべきかは、その過程で自然に見えてくるから。それが順序だから。