No.240
最終回
性的嫌悪を感じる夫とはセックスレス。離婚を決意して別居中
ですが、夫が応じてくれません。将来の娘のことも心配です
M・Iさん(33歳) 娘(5歳)
2006.8.16
 いつも真摯なアドバイス、拝読しております。現在、私も下記のような状況です。恐縮ですが、アドバイスを頂ければと思います。
 私と夫は、5年前に会社の同期同士で結婚しました。当時、私は在宅業務に転職したかったこともあり、フィジカルな相性や言葉にできない不安はあったもののプロポーズに応じました。今思えば、このときにしっかり考えなかったことが最もいけないこととは思います。
 その後、すぐ妊娠しました。妊娠中は夫も仕事上非常に追いつめられた状況で、出張で土、日もほとんど家にいない状態でした。夫婦間のコミュニケーションはおろか、お互いの思いやりに欠けていた時期でした。当然、激しいセックスレスになり、これは現在も続いています。程度は生理的嫌悪に近く、あまり長時間傍に寄ることができず、洗濯物もほぼ別に干し、触ることもできません。私が鬱病になって通院したため、しばらく無収入に近い状態だったことも家庭の中で悪循環となり、夫は仕事の愚痴、私は無言で仏頂面という家庭環境は最悪でした。
 他にもさまざまな原因ともからんで、約3年半前から離婚(を前提にした別居)を、私から申し出ました。最初の申し入れの際は、私の実姉にも相談し、「もっとよくお互いに問題を掘り下げて」と協力してもらい、幾度も話し合いをふたりで続けました(この時点では双方の両親にはまだ何も言っていませんでした)。その後、私の両親と姉に私が呼び出され、姉から私の離婚問題について聞いたことと、理由等を求められました。
 この話し合いの場では、(まだ「両親の娘時代」であった私のトラウマからきていた)夫がしたちょっとした性的なコミュニケーション(ボディタッチ)に対する嫌悪なども含め、全て話をしたところ、「じゃあ、もう今となってはしようがないじゃない。ちゃんと外で働き始めて別居しなさい」という結論になりました。
「早い段階で相談してくれないと」と全員から非難されましたが、当時の私はとてもそういった夫婦関係のことを親に話すことは、恥ずかしいことと思っていました(そもそもオープンに話せるような人間であったならば、少女時代の性的なトラウマは生まれていないと思いました)。もともと祖父母に育てられたせいか、私の場合は何でも発信型の姉と違い、父母と関係がうまく結べていないようです。
 現在は、ようやく夫が「(私の)経済的自立のための別居」として、娘を連れての別居を認めてくれ、私も在宅業務ではありますが、娘と二人暮らしが完全にできる収入を得ています。こうなった原因は、夫婦ともにお互いに対して依存心が強く、かつ自己中心的(自分の方が尊重されて当たり前と感じている)だったこと。それとコミュニケーションをする努力を怠っていたからだと思っています。
 夫は、自分がそれほど悪い夫ではないと主張しており、離婚には応じたくないようです。また、私がカウンセリング等で「立ち直る」ことで、また仲良くできると信じています。周囲の人は、私よりは娘のことを心配しています。それは勿論そうだと思います。鋭敏な乳幼児期に私が鬱だったために娘の精神状態もあまりよくなかったと思っています(残念ながら当時それを考えてはやれませんでした)。
 現在は私も快調ですし、どんなことになっても離婚をするという自分の決意は変わりません。「どんなこと」の中には、最悪の場合、娘と別離することも入るかもしれません。お聞きしたいのは、娘に対してこれだけは気をつけてという点と、何度話し合ってもまだ希望を持っている夫に対し、どう思いを分かってもらえるかについてアドバイスをお願いします。勿論「考えが甘い!」というお叱りがあれば真剣に受けとめたいと思います。
 
離婚問題で一番傷ついているのは、切り捨てられる娘さんじゃないかな。
娘さんに十分愛情が伝わる方法で解決してください
 結婚にいたるまでの気持ちと、生理的嫌悪感を覚えるようになるまでの過程は、きっちり整理されていてよくわかりました。なぜそうなったのかという原因に関しても、夫の側だけの非を責めるのではなく、自らの失敗も冷静に分析されている。

 そして、離婚という結論を明確に導き出している。すでに迷っている状態ではなく、決心をしてしまっているわけで、経済的自立も果たし、着々と決めた道を進んでいる。あなたが気になっているのは、夫がまだあなたとやり直せるのではないかという希望をもっていることと、娘さんに対してどんな点に気をつけたらいいかということ。

 まず、夫に関しては、そのうち希望を捨てると思う。別居を受け入れた段階で夫は一歩退いたわけよ。何としても離婚したくない、離れたくないという感情的につきまとうような行動をとっていないから、あなたの決意が揺るがないとわかれば関係修復に関してはあきらめるでしょう。

 ただ、関係修復をあきらめることと離婚に応じるということは、必ずしもイコールではない。意地で離婚に応じないというケースはけっこうあるから。金銭的に問題があったとか、女性関係や暴力行為など、背信や義務の放棄など明らかな理由がない場合、調停や裁判になることもある。できればそれを避け、お互いに傷つかないためには、やはり相手が納得して協議離婚に持っていけることを目指したらいい。

 あなたはどんなことをしても離婚すると決意しているようだから、難航することも視野に入っているんでしょうね。そして、その時に争点になるかもしれない娘さんの親権に関しても、すでに心を決めている。

 もし、離婚に応じる条件に娘の親権を求められることになった場合、娘をあきらめても離婚を選ぶ。それは、たとえ娘を手放しても、どうしても離婚したいという強いあなたの意志の表明かもしれないけどね。まだ5歳の娘さんの意志はどうなんだろうか。子供って、親の心を実に鋭く感じ取るものだから、あなたのそんな決意は心の奥底に秘めているつもりでも、何となく察している可能性はあると思うね。

 私がとっても気になっているのは、自分を語る言葉はあふれているのに、娘さんのことを語る言葉がとっても少ないことなのです。

 最悪の場合は娘と別れてもいいというあなたの気持ちはわかるけど、その場合に、娘さんはどうなるのかという心配は、具体的に伝わってこない。あなたはとっても理性的な人だけれど、やはり自分中心に物事を考えてしまう傾向と、ひとたび自分で結論を出すと、それを達成することがひとつの目標になって突っ走って行く傾向があるように感じられる。だから、それを妨げるものがあらわれたら、苦しくてもそれを排斥して進もうとする。間違っていたらごめんね。

 でも、切り捨てるあなたも辛いだろうけど、切り捨てられる方は、もっともっと辛いし悲しいんだよ。私は、数行しか登場しない娘さんのことをついつい考えてしまう。

 もし夫が引き取ったら、 誰が育てるんだろうか?  夫がクレーマークレーマーしてくれるの? それとも実際には夫の実家の祖母が育てるの? あなたとの暮らしから環境が変化して、それがどんな影響を与えるんだろうか? それで子供は本当に幸せになれるのだろうか? もし夫が再婚したら、子供はどうなるんだろうか? もしそのことで子供の心が深い傷を負ったとしても、母親として仕方がないと割り切ることができるんだろうか?

 次から次から不安が生まれてきて、聞きたいことがあふれてきて、「娘に対してこれだけは気をつけてという点」どころの騒ぎじゃなくなっちゃう。

 あなた自身、親子関係で何かトラウマを抱えている気配は感じるけど(この部分だけ抽象的な表現になっているので、詳しいことはわからないけど……)、トラウマを理由にしてしまっては、トラウマは乗り越えられないからね。「だからしようがないのよ」とトラウマに逃げ込んじゃいけないんだよ。

 幼い時から、 両親の仲がすっきりしない中で育ち、子供心に不安を感じてきた娘さんに、あなたは母親として何を与えてあげたいの? 気をつけなければならない点なんて、小手先のケアでいいんだろうか。笑顔を絶やさないでねとか、不安を感じさせないようにして!なんて言ったって、そんなポーズはすぐ見抜かれちゃうと思う。

 離婚のためなら手放すこともいとわないというなら、 子供に気をつけてあげなければならない点より、例え子供の気持ちを踏みにじってまで、自分の気持ちに忠実に生きる辛さをどう乗り越えたらいいのか……ということが問題になるんじゃないかな。

 ひとりでは生きていけない子供に、心から安心できる環境を与えてあげるのが親の務めじゃないかと私は思っています。生活が多少苦しくたって、親の都合で離婚することになったって、自分は愛されているんだという確かな手ごたえさえあれば、子供の気持ちは安定するもんだよ。この子は絶対に自分が育てる。どんなことをしてもこの子を守り抜く。この子を奪われるくらいなら、離婚までに時間がかかってもかまわない。そんな親の気持ちを感じさせてあげてほしい、これからどうなるのかなと、不安定な思いに耐えている娘さんを思い切り抱きしめてあげてほしいと思うけど……やっぱり無理かな。

 自分の決意を悟られないように……なんてのは、大人には通用しても子供には通用しないからね。

「吉永みち子の心すっきり相談室」は、これで終了します。
長い間ご愛読ありがとうございました。